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アートトランスレーター~芸術に特化した通訳者&翻訳者~

2020年1月26日

こんにちは!トリじょ(日英中トリリンガル女子)のマミです(現在妊娠7か月)。

今回は「アートトランスレーター~芸術に特化した通訳者&翻訳者~」と題して、昨日2020年1月25日参加したJACI(日本会議通訳者協会)主催のワークショップ「アートトランスレーター通訳講座:アートの声になるということ How to be the Voice of Art」をまとめました。

芸術に特化した通訳者&翻訳者・アートトランスレーターとはどういうお仕事なのか、ご興味ある方に有益な情報になれれば幸いです。

はじめに

わたくしことトリじょ、自己研鑽と趣味を兼ねて、語学やヨガのワークショップを定期的に受講している。

今回もその一環で「アートトランスレーター通訳講座」を受講し、結論から言うと内容が非常に充実した、学び多いワークショップだったので記事にまとめた。

トリ女の受講目的は下記3点を理解すること。

  1. アートトランスレーターとはなにか(一般的な通訳者との違い)
  2. アートトランスレーターならではのやりがい&困難
  3. アートトランスレーターのお財布事情

それでは下記にワークショップ内容と上記目的の答えをお伝えしていく。

アートトランスレーター通訳講座内容

今回のワークショップは、アート専門の翻訳・通訳者の活動団体「 Art Translators Collective」を主宰するアートトランスレーター・田村かの子氏が講師をつとめ、下記スケジュールで進められた。

 

  1. 13:30-14:15 導入(現代アートの歴史)
  2. 14:15-15:15 通訳実践
  3. 15:15-15:30 休憩
  4. 15:30-16:00 フィードバック&シェア+Q&A
  5. 16:00-17:00 アートトランスレーションの特徴と現状

 

まず「1.導入(現代アートの歴史)」。

現代アート成立以前の歴史を簡単にレクチャー頂いた後、現代アートの特徴&鑑賞するときの着眼点を説明してもらう。

現代アートの特徴は下記点とのことで、

  •  既存の枠組みや視点に疑問を呈する作品
  •  同時代性:現代社会の課題や情勢を反映(作品例:ピカソの『ゲルニカ』)

アートトランスレーター

  •  社会や歴史、既存の形式などへの批評性あり
  •  日常生活に根差した発想(崇高な、高貴な芸術とは一線をおく)
  •  美しいだけがモノサシじゃない、万人受けするとは限らない(作品例:キム・ソギョン&キム・ウンソン夫妻の『平和の少女像』)

アートトランスレーター

  •  作家本人が作らなくてもいい
  •  モノがなくてもいい、残らなくてもいい

講師の田村氏が上記特徴を代表作品(パワポ画像あり)とともに丁寧に説明してくれた。

さらに、上記特徴があるからこそ、現代アートを鑑賞するときの着眼点は下記が含まれるという。

  1. アーティストの出身地&バックグラウンド
  2. 当時の世界情勢&アーティストの出身国の状況
  3. どんな問題提起がされているか、どんな解釈が可能か
  4. 美術史の中での位置づけ
  5. 観客の反応&批評家の評価

アート素養不足のトリじょは、着眼できて「1.アーティストの出身地&バックグラウンド」と「2.当時の世界情勢&アーティストの出身国の状況」くらいだろう。

 

そして次に「2.通訳実践」と「4.フィードバック&シェア+Q&A」。

映像制作アーティスト・荒木氏(日英バイリンガル)の英語スピーチを日本語にする英日逐次通訳。

2人1組のペアをつくり、15分の逐次通訳を各2回実践(つまり、AとBの通訳者がいた場合、ABABの順で15分の逐次通訳を交互に実践し、計60分英日通訳を行う)。

その後ペアでフィードバックを行い、田村氏による主要な語句の解説を受けたのち、参加者からの語句&表現についての質疑応答時間。

トリじょのパートナーが社内通訳歴10年以上のベテラン通訳者だったこともあり、ベテラン通訳者の通訳をナマで聞ける&通訳実践ができる&語句も学べる、と大変勉強になった

 

最後に「5. アートトランスレーションの特徴と現状」。

アートトランスレーションの特徴(一般的な通訳者との違い)は下記3点。

  1. クリエーション
  2. ディレクション
  3. メディエーション

「1.クリエーション」は、通訳、翻訳の内容&質がそのまま作品の内容&質に影響する点。

「2.ディレクション」は、アートの通訳には選択肢があるため、作品ごとに通訳のディレクションが必要となる点。

たとえば、通訳しないという選択肢もあれば、作品によって正確性重視またはスピード重視の通訳が求められる。

これは通訳者の自己判断ではなく、作品全体を統括する者によるディレクションが必要となる行為。

「3.メディエーション」は、関係者全員がクリエーションに参加できるよう、より良い現場を一緒に作る努力をする点。

具体的には、関係者同士のコミュニケーションが作品の内容&質に影響あるため、全関係者がスムーズなコミュニケーションがとれるよう、コーディネーターの役割も担う。

 

以上が3時間30分の濃密なワークショップの内容である。

トリ女の感想

トリじょのワークショップ参加目的は下記3点だった。

  1. アートトランスレーターとはなにか(一般的な通訳者との違い)
  2. アートトランスレーターならではのやりがい&困難
  3. アートトランスレーターのお財布事情

そのうち「1.アートトランスレーターとはなにか(一般的な通訳者との違い)」と「2.アートトランスレーターならではのやりがい&困難」については、ワークショップ内容の「5. アートトランスレーションの特徴と現状」で理解が深まった。

特に「3.メディエーション」の役割(コーディネーターの役割)は、通常の通訳&翻訳業務とは異質の付加業務となるため、コーディネーターしながら通訳&翻訳の質を維持するのは非常に難しそうである。

さらに時間も予算も足りない案件が多いとのことなので、具体的な「3.アートトランスレーターのお財布事情」を聞く機会はなかったものの、アートトランスレーター不足の理由がある程度理解できる。

 

講師の田村氏は、そんな現状を改善する目的もあって「 Art Translators Collective」でアートの世界で通訳・翻訳の価値を発信しているとのこと。

今後のご活躍に期待したい。

田村かのこ氏のTwitterはこちら。

アートトランスレーター~通訳者を目指したきっかけ~

実はトリじょ最初の通訳経験がアートトランスレーターだった(当時は「アートトランスレーター」なる高尚な肩書はなかったが・・・)。

そしてこの経験が良くも悪くも、通訳へのトラウマを生み、通訳者を目指すきっかけになった。

 

約10年前の東京外大4年生の頃。

大学の掲示板に「外国人劇団員来日!通訳募集」といった軽い感じの求人があり、募集条件は確か「通訳やってみたい意欲のある学生」で、給与は日当1万円。

大学卒業してから現在に至るまで英語を生計の糧にし、駆け出し通訳者になった今となっては、そんな怪しい求人やめておけ!と当時の自分に言いたいところだが、募集条件通り「通訳やってみたい!」という好奇心だけで応募&すんなり採用されたのである。

当時の英語力は英検1級、TOEIC900点程度、留学経験なしで英語ほとんど話せず

面接者も東京外大英語科と資格(英検1級&TOEIC900点程度)だけで採用したと思われる。

アルバイト内容は、14名の外国人劇団員(非英語圏出身&英語まったく話せないメンバー複数人あり)と日本人制作スタッフとの通訳で、この約20名のチームで2週間日本各地を公演してまわるものだった。

が、実際は雑用から通訳(と言えるか分からないたどたどしい英語)を朝から晩までこなし、団員同士の人間関係に悩まされたり、要望をはっきり伝える外国人団員と、それを文句が多いと感じる日本人スタッフの仲をとりもったりなど、とりあえず何でもやるしかなかった

そして無事全公演が終わった打ち上げの夜、通訳がトラウマになる事件発生!

実はトリじょチームのような外国人&日本人チームが他に4チームほどあり、打ち上げの夜だけ全員レストランに集合したのである。

そして面識ないスポンサーなどの関係者も全員集合し、約120名ほどの大所帯になったところで、これまた全く知らない1番のお偉いさんと思われる日本人のスピーチが始まった。

運が悪いことに、トリじょが日英通訳を突然担うことになったのである。

あとはご想像の通り。

ナントカ協会のエライ役職の私が、ナントカ協会のエライ役職のAさんの協力を得ながら、ナントカ協会のエライ役職のBさんと一緒に、ナントカ慈善事業の一環としてナントカ団体を立ち上げ、そしてナントカ企業から資金援助を受けて、晴れて今回の公演が実現し・・・

と、英語力不足&スピーチ長い&固有名詞多い&何が言いたいか分からないの四重苦でまったく通訳できず、オロオロして通訳しない(できない)トリじょに対し、あからさまに不機嫌になったそのお偉いさんは、通訳用のマイクをトリじょから乱暴に取り上げてThank youと大声で言い放った。

1番のお偉いさんのメンツを潰したトリじょは、朝から晩まで働いた2週間の激務もむなしく、こんなに英語ができないとは思わなかった、と採用者から冷たい言葉をかけられてアルバイトを終えたのである。

 

この日以来20代の間ずっと「通訳」がトラウマになったが、トラウマになった(苦手意識が心にずっと存在している)からこそ、通訳者という職業をずっと意識してきた。

現在駆け出し通訳者に従事しているのも、その縁ではないかとさえ思っている。

、アラサー通訳者となった今当時を振り返ると、お偉いさんメンツ潰し事件については、通訳に対する理解不足の主催者側にも落ち度がある。

なので、同じ境遇にあった若い方々はめげずに語学を使ってご活躍頂きたい。

田村氏率いる「 Art Translators Collective」の活躍をささやかながら応援している。

おわりに

これで「アートトランスレーター~芸術に特化した通訳者&翻訳者~」はおしまいです。

参加者20名あまりのボリュームゾーンは40~50代でしたが、20代・30代も数名いました。

座学、通訳実践、質疑応答のバランスが絶妙で、ワークショップ後にもやもやがなく(理解しにくかった部分がない)、最近参加したワークショップの中で1番質の高い授業でした。

ワークショップ終了時刻も予定時刻通りの17時ジャストで、さすが東京芸大の講師もされている方だなと。

講師の田村かのこさん、通訳実践用にスピーチしてくれた荒木さん、司会の関根マイクさん(日本会議通訳者協会理事)、大変ありがとうございました!

記事更新のはげみになりますので、トリ女のTwitterをフォローしてもらえると嬉しいです

  • この記事を書いた人

マミ@日英中トリリンガル

中国語キャリア模索中のアラサー駆け出し日英通訳者。超論理思考の夫に日々脳トレしてもらう、非キラキラ系コンサル妻。2020年1月現在妊娠中&同年春に第1子出産予定。

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