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奇才の字幕屋・太田直子の魅力を生涯作品からひもとく①

2019年8月4日

こんにちは!トリ女のマミです。

 

今回は「奇才の字幕屋・太田直子の魅力を生涯作品からひもとく①」と題し、読者の皆さまからご好評を頂いた下記記事の続編として、奇才の字幕屋・太田直子氏の書籍をご紹介します。

 

太田直子氏のデビュー作『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書)の紹介記事はこちら。

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56歳の若さで鬼籍に入られた太田直子氏。

 

『ボディガード』や『バイオハザード』シリーズなど多くの作品を手がけた氏は、生涯6冊の書籍を残しています。

 

今回はその6冊を簡単にご紹介し、特に字幕をメインテーマにつづる3冊を次回一緒に味わっていきたいと思います。

 

字幕翻訳や映画、英語に興味ある方などに有益な情報になれれば幸いです。

 

 

はじめに

太田直子氏が「字幕翻訳家」ではなく「字幕屋」と自称するのは、氏の大先輩・故清水俊二氏が「字幕は翻訳ではない」という持論を掲げ、「字幕屋」を称していたことに由来する(『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』p164)。

 

「セリフ1秒=4文字」が基本原則の字幕翻訳世界。

 

この厳しい字数制限により、翻訳どころか、時には大意を伝えることさえ難しい。

 

したがって、「字幕屋」という呼び名は、字幕は内容理解を助ける「補助道具」である(字幕ではセリフの内容すべて伝えられない)という控えめな主張とも捉えることもできるかもしれない。

 

この厳しい字数制限1週間で1作品の翻訳を終えるタイトなスケジュール、時代により変化する日本語との悪戦苦闘しながら、持ち前の毒舌とユーモアの絶妙なバランスで、字幕屋・太田直子氏は約30年間の字幕屋生涯を駆け抜けたのである。

 

太田氏の紹介を簡単に終えたところで、氏の名前で出版された本6冊を下記に紹介する。

 

字幕屋・太田直子氏の生涯6作品

 

  • 『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書、2007年2月)

字幕屋・太田直子氏のデビュー作でもあり、代表作品。

 

下記記事でご紹介してるので、興味ある読者はこちら。

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  • 『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』(岩波書店、2013年4月)

 

 

字幕翻訳家を目指す方には一番おススメの本である。

 

本書には、『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』では書ききれなかった、「ハコ書き」や「仮ミックスチェック」など字幕ができる過程をより詳しく紹介されている。

 

それ以外に、字幕屋になる一般的な方法や、氏の字幕屋生活を面白くつづった日記、氏が字幕屋になるま過程もあわせて語られているので、字幕屋・太田氏への理解が深められる。

 

  • 『字幕屋に「、」はない』(イカロス出版、2013年9月)

本書は『通訳・翻訳ジャーナル』に連載したエッセイ(2004年~)に、加筆・修正加えて再編集した作品。

 

題名だけを見ると、デビュー作『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』でも登場した「字幕屋に「、」はない」議論をさらに深める書籍なのか・・・と思ったが、実際は、字幕にまつわる様々な課題を語る短いエッセイ集をまとめた作品で、そのなかに「字幕屋に「、」はない」という題名のエッセイが含まれていた。

 

氏の毒舌&ユーモアは健在だが、デビュー作『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』と2作品目『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』と内容がかなり似ている感は否めず。

 

デビュー作・2作品目を読んでも、まだまだ氏の字幕談話に興味ある方は読んでみていただきたい。

 

  • 『ひらけ! ドスワールド――人生の常備薬ドストエフスキーのススメ』(ACクリエイト、2013年10月)

なぜ急にドストエフスキー・・・と驚かれた読者に、太田直子氏の字幕屋人生をここで簡単に紹介したい。

 

参考文献は2作品目『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』。

 

書籍の分析的で知的な文章から想像しにくいのだが、太田直子氏、心惹かれるものに猛突進する情熱家なのである。

 

中学時代に卓球とドストエフスキーに燃え上がり、「ロシア語・ロシア文学が学べて卓球部が強い私大」という条件に唯一マッチした天理大学ロシア学科に入学。

 

大学2年時に卓球を挫折するも、情熱を注ぐ先を一本化してロシア文学を極めるため大学院受験を決意。

 

が、大学院受験2年連続で全敗。

 

しかも、「君のところの”優秀な学生”というのは、こんなにひどいのか?」と、氏の大学の恩師が受験先の教授に嫌味を言われたほど、ひどい結果で。

 

それでも三度目の正直で早稲田大学院に入学した若き太田氏にさらなる出会いが。

 

浪人中に知った字幕翻訳という仕事に興味を持ち、「ロシア文学研究より、こっちのほうが面白そうだ」と、なんと大学院を1年で退学してしまったのである。

 

以上が、氏の字幕屋前キャリアである。

 

若き氏が情熱を傾けたドストエフスキー作品を、難易度と氏のコメントを添えて紹介しているのが本書である。

 

氏の字幕屋談話をメインとする次回記事ではくわしく紹介することはないが、氏の字幕屋以外の一面を垣間見れる貴重な作品のため、機会あれば別記事で書いてみたい。

 

  • 『字幕屋の気になる日本語』(新日本出版社、2016年7月6日)

2016年1月、太田直子氏は惜しまれつつ逝去した。

 

本書は氏の字幕屋生涯最後の作品にあたる。

 

そんな書籍にあまり批判的になりたくないのだが、本ブログの忙しい読者目線で語ると、「ぜひ読んでいただきたい!」と強くおススメできる作品ではないこと、正直にお伝えしたい。

 

氏の急なご逝去もその一要因だと推測するが、本書、異なる出版社3社で掲載された、おそらく別テーマのエッセイを1冊にまとめた作品のため、内容に統一感欠けるのだ。

 

氏の日本語談話を中心とする「その1」、字幕屋談話を中心とする「その2」、字幕翻訳作成過程に焦点をあてた「その3」から構成されるのだが、これまでの作品と内容が重なる点も多い。

 

それでも本書の特筆すべき点を挙げるとしたら、本書最後に登場する「字幕屋になりそこねた弟子から太田さんへの少し遅れた手紙」だ。

 

氏と師弟関係にあった小説家星野智幸氏が亡くなられた太田氏をつづる手紙で、生前氏がどういう方だったのか理解が深められる。

 

星野智幸のTwitterはこちら。

twitter.com

 

  • 『字幕屋のホンネ』(光文社・知恵の森文庫、 2019年2月)

本ブログを書いている2019年、なんと字幕屋の新刊が出版されていた。

 

氏はすでに亡くなられているので、どういうことだろう・・・と本書を入手してみたところ、氏のデビュー作『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』を修正&加筆、文庫化した作品だった。

 

ざっと目を通したところ、デビュー作の内容から大きく変更&加筆されたところは見当たらなかったが、上記カバーイラストのようなユーモアあふれるイラストが、挿絵として新しく登場。

 

エッセーの題名を映画の題名にかける氏のスタイルから鑑みると、デビュー作『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』の方が字幕屋・太田氏をより体現していると思う。

 

が、これはトリ女の想像ではあるが、予算取りからお上の承認、各種関係者との調整等々、いろんな煩雑なプロセスを覚悟して、字幕屋・太田直子氏のデビュー作を再度世に知らしめたいという熱意のもと、晴れて2019年2月に出版されていることを考えると、新刊『字幕屋のホンネ』の購入をおススメしたくなってしまうのである。


おわりに

今回は字幕屋・太田直子氏著の6作品ご紹介しました。

 

次回では、そのうち字幕をメインテーマにした3作品『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』・『字幕屋に「、」はない』『字幕屋の気になる日本語』を一緒に味わっていきます。

 

字幕屋・太田ワールド、まだまだ続きますよー。

 

最後に今回ご紹介した6作品を一挙ご紹介(出版年順)。

 

『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書、2007年2月)

 

 『字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記』(岩波書店、2013年4月)

 

『字幕屋に「、」はない』(イカロス出版、2013年9月)

 

『ひらけ! ドスワールド――人生の常備薬ドストエフスキーのススメ』(ACクリエイト、2013年10月)

 

『字幕屋の気になる日本語』(新日本出版社、2016年7月6日)

 

『字幕屋のホンネ』(光文社・知恵の森文庫、 2019年2月)

 

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  • この記事を書いた人

マミ@日英中トリリンガル

中国語キャリア模索中のアラサー駆け出し日英通訳者。超論理思考の夫に日々脳トレしてもらう、非キラキラ系コンサル妻。2020年1月現在妊娠中&同年春に第1子出産予定。

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